はじめに(事任八幡宮資料集成刊行にあたり)
天野 忍
事任八幡宮の歴史は、古く原始・古代の祭祀に遡ります。この豊かな歴史と文化を明らかにし、その成果を神社が地域の拠点となって多くの人々に伝え、後世へと紡いでいく。この願いのもと、具体的な調査活動が開始されたのは、平成24年から平成25年頃のことであります。
第16代神主譽田秀之は、神社振興を心掛け、その遺志を受け継いだ妻の玲子は、神社に伝わる膨大な古文書の整理と保存を、いかになすべきか、腐心しておりました。そのようななか、知人の平尾三千代の孫、松本直之の協力を得て整理に取り掛かり、牧之原市の大江八幡宮神主中村肇に相談を掛けて、平成26年4月、事任八幡宮古文書研究会を設立しました。神社職員の全面的な協力のもと、これに天野忍と鈴木亜絵美が加わることとなり、調査体制が立ち上がりました。爾来、ほぼ月1回の調査を実施することとし、ほぼ4年の歳月が経過しました。古文書の調査では、平成初年に行われた静岡県史編さん事業の成果を受け継ぎながら、改めて一点づつ資料を確認し、概要をまとめて袋詰めを行ってまいりました。平成28年度からは、宗教法人神社本庁の助成金をいただくことができました。
調査にあたっては、神社の資料に適合する分類基準を設けて整理することとしました。雨洩りや虫損被害を受けた古文書も多く、注意深く開封しながら調査を実施、そのために、当初の予定をはるかに超える結果となりました。併せて主な古文書の解読作業を進めるとともに、神社に関系する古文書の所有者を訪ね、大学等の研究機関や研究者の協力を得て、書画や書籍等の調査を行うことができました。また、神社造営の棟札や石造物等の調査では、実測や拓本作成を行い、赤外線撮影を試みました。また、資料の調査・整理では、静岡県内の多くの研究機関の御世話になりました。
平成30年は、明治維新150年の記念すべき年であります。そこで、幕末から現在に至るまでの資料を重点的に調査し、吉田神道や国学・国家神道等の整理を進め、『事任八幡宮資料集成』の刊行に至ったわけであります。あらためて感謝申し上げます。